朝ドラ「ばけばけ」では、トキの父・司之介(演・岡部たかし)が「うさぎビジネス」を始める場面が描かれ話題となりました。
「うさぎ商売」を紹介したのは、シルクハットをかぶった怪しい人物、金成初右衛門(演・田中穂先)。しかし金成は縄でぐるぐる巻きにされ連行されていました。
その後、父・司之介が川の中洲あたりでふらふらと歩いているという、その不穏なシーンにSNSでも不安や憶測の声が相次ぎました。
一体、金成とは何者なのでしょうか?
この記事では、金成の正体を考察するとともに、史実として存在した「明治時代のウサギバブル」について詳しく解説します。
金成初右衛門とは?怪しい人物の正体を考察

怪しすぎるビジネスパートナー・シルクハットの上流感
ドラマ「ばけばけ」で登場した金成初右衛門(演・田中穂先)は、司之介(演・岡部たかし)が城勤めをしていた時の知り合い。
司之介に「良い商いがある」とうさぎ商売を紹介したという、どこか得体の知れない存在です。
その特徴的なアイテムは、山高帽よりもさらに高さのあるシルクハット。まるで上流階級の紳士のような装いで、落ぶれた元武士でまだ髷を結っている司之介とは対照的な存在感を放っています。
シルクハットと「うさぎ商売」という組み合わせは、視聴者から「不思議の国のアリスみたい」とも話題に!
本人曰く、「金で成り上がった初めての右衛門と書いて金成初右衛門」と自己紹介。さらに怪しさが倍増します。
富裕層を思わせる外見に対し、持ちかける話は怪しげで、どこか胡散臭さも漂っています。まさに「怪しすぎるビジネスパートナー」と言えるでしょう。
お縄になるラストへの伏線
そんな金成ですが、登場した直後から「これは危険な人物ではないか?」と不安を抱かせる描写が続きました。
案の定、放送のラストでは縄でぐるぐる巻きにされ、役人に連行されていく姿が映し出されます。

この展開にSNSでは「やっぱり怪しかった!」「司之介が巻き込まれるのでは」と不安の声が多数あがりました。
実際、その後の司之介が川の中洲をさまよう姿は、まさに伏線回収のように不穏で、金成との関わりが破滅へ導くのでは、と視聴者をざわつかせました。
金成初右衛門はフィクション?実在モデルはいた?
では、この「金成初右衛門」という人物の正体とは?また、実在したのでしょうか?
まず名前からして、「金で成り上がった、はじめての右衛門」という非常にわかりやすいネーミング。時代劇や落語に登場する架空の成金キャラを思わせる響きです。
そのため、多くの視聴者が「フィクションだろう」と感じたはずです。

金成という人物そのものは記録に見当たりませんが、「シルクハットをかぶった成金」「新しいペットビジネスを持ち込む人物」という造形は、当時の上流階級や投機家をモデルにしている可能性があります。
つまり金成は、実在人物の要素を組み合わせた“フィクション的実在”キャラクターだと考えられます。史実の「ウサギバブル」とドラマの演出をつなぐ存在として配置されたのでしょう。
「うさぎ商売」は実在した?明治の「ウサギバブル」の真相
ドラマ「ばけばけ」で登場した“うさぎビジネス”。
実はこれは完全な作り話ではなく、明治時代に実際に起きた社会現象「ウサギバブル(rabbit mania)」を下敷きにしています。
これは、近代日本におけるもっとも有名な「動物投機バブル」ともいえる出来事でした。
ウサギが流行した時代背景
明治維新後、日本には西洋文化や新しい産業が次々と流れ込みました。服装や建築、生活習慣が大きく変わるなかで、ペット文化も広がりを見せます。
流行の始まりは明治4年(1871年)。西洋から輸入された「カイウサギ」が珍重され、翌年の明治5年(1872年)には富裕層を中心に一気に人気が拡大しました。
特に「耳長兎」や「毛並みの美しい品種」が注目を集め、持ち寄ったウサギの毛色や姿を競う「兎会(うさぎかい)」と呼ばれる集会が盛んに開かれました。

ウサギを抱いて記念写真を撮るなど、当時のモダンな紳士・淑女のステータスシンボルとなったのです。
驚きの価格高騰
最初は 1羽5円前後 で売られていたウサギが、人気品種の登場で価格は急騰。
当時の庶民家庭の子供の小学校月謝は 2カ月で1円 ほど。ウサギ1羽で100年分以上の学費が支払える計算になり、まさに投機的な“バブル”状態でした。
バブルとその崩壊
投機熱がピークを迎えたのは明治6年(1873年)。しかしウサギは繁殖力が強すぎ、供給が一気に増加。価格の乱高下や破産者が続出したため、ついに明治6年1月18日に東京府が「兎会禁止令」を出します。
さらに同年12月7日には「兎税」が導入され、ウサギ1羽につき月1円の税を課す厳しい布達が発布されました。
無届けで飼っていた場合は 過怠金2円 を徴収されるなど規制は強化され、飼育放棄や川に流すなどの悲しい事例に加え、売買をめぐる親子喧嘩が殺人事件にまで発展したケースも伝わっています。
その後、規制と価格暴落によりブームは急速に終息し、明治13年(1880年)頃 には完全に衰退。日本最初の「動物バブル」は幕を閉じました。
ドラマ演出と史実の違い
ドラマ「ばけばけ」では明治8年という設定のもと、ウサギバブルを描いています。
しかし、史実ではバブルのピークは明治6年であり、明治8年には熱狂はすでに落ち着き始めていました。この時代のずれを踏まえると、ドラマは史実をそのまま再現しているわけではないことがわかります。
そこに登場するのが、金成初右衛門というわかりやすい成り上がりキャラクターです。
彼を通じて、投機熱に踊らされる人々や、高額で取引されるウサギの狂騒ぶりが視覚的に表現されています。
一方、トキの父のモデルとなった小泉弥右衛門湊は、実際にはウサギ商売を行った記録はなく、機織工場を興した実業家です。
まとめ:金成の正体と「明治のウサギバブル」が意味するもの
史実の小泉弥右衛門湊はウサギ商売をしておらず、機織り工場を興した実業家でした。しかし、金成を通して描かれる投機熱や狂騒ぶりは、明治のウサギバブルという実際の現象を象徴しています。
つまり、ドラマは史実の事実を完全再現するのではなく、数字やキャラクターを用いて「人間の欲望や幻想に翻弄される普遍的なテーマ」を視覚的・物語的に表現しているのですね!


コメント